相続人がいない場合の遺産の行方について|わかりやすく解説!

相続人がいない場合の遺産の行方は?|わかりやすく解説
目次

特別縁故者に対する相続財産の分与制度

相続人不存在の場合の国庫帰属

被相続人(亡くなった方のこと)が残した遺産は、遺言がある場合はその内容のとおりに、遺言がない場合は法律によって定められた法定相続人の遺産分割協議の内容に沿って分配されます。

それでは被相続人に法定相続人が一切いない場合はどうなるでしょうか。
このような相続人不存在の場合の相続財産は、「国のものになる」との認識が一般にも広がってきていますが、これは厳密には誤りです。

相続人不存在の場合の遺産は自動的には国庫に帰属せず、相続開始後は所有者がいない財産として宙ぶらりんの状態となります。この後に、利害関係人から「相続財産清算人の選任の申立て」が行われると、選任された清算人が、遺産の内の債務の清算や不動産・証券等を売却換価した上で最終的に国庫に帰属させる任務を行います。よってこの申立てが行われないと宙ぶらりんの状態が続くことも起こり得ます。

先の「利害関係人」とは、被相続人の債権者(例えばお金を貸していた人)や被相続人がマンション1戸を所有していた場合のマンション管理組合などが典型例です。

債権者は貸していたお金の回収、管理組合は管理費等の徴収を行う必要がありますが、被相続人に相続人がいなければ、請求を行う相手方がいません。このような場合に、「相続財産清算人の選任の申立て」を行い、選任された清算人(弁護士、司法書士など)に対して請求を行うことで債務を清算してもらうことができます。この清算の後、なお残った遺産があれば国のものとなります。

特別縁故者への財産分与

前述のとおり、被相続人に遺言がなく、さらに法定相続人も一切いない場合には、残った遺産は一定の手続を経て国のものとなるのが原則です。しかし、例え遺言がなくとも、被相続人と生計をともにしていた者や、長年被相続人の介護に努めた者などがいる場合に、そのような事情を無視して残った遺産を一律国庫帰属させることは合理的とはいえません。

そこで昭和37年の民法改正により、「特別縁故者制度」が新設されました。これは相続人不存在の場合において被相続人と一定の関係にあった者に遺産を取得させることを目的として、遺言制度を補完するものとして位置づけられています。

具体的な手続は後述しますが、先の相続財産清算人が行う清算手続の中で、特別縁故者が家庭裁判所に申立てを行い、相当の関係性が認められた場合には、遺産の全部又は一部を取得することができます。

家庭裁判所における特別縁故者の手続

特別縁故者の範囲

法律上、特別縁故者とされる者は下記の3つに分類されます。

  • 被相続人と生計を同じくしていた者
  • 被相続人の療養看護に努めた者
  • 被相続人と特別の縁故があった者

裁判例によれば、①の具体例として、内縁の配偶者、事実上の養子、子の配偶者などが特別縁故者と認められています。

②については、職場関係者や民生委員、看護師が特別縁故者として認められた事案がありますが、このうち看護師のように対価を得て療養看護に努めた者は通常特別縁故者として認められることはなく、得ていた対価以上に尽力していたと認められる例外的な場合に限られるものと考えられます。

③の「被相続人と特別の縁故があった者」については具体的な判断基準は示されていませんが、上記の①②に準ずる程度の密接な関係性が必要であると考えられています。裁判例では、宗教法人、社会福祉法人、地方公共団体などが特別縁故者として認められた事例がありますが、ケースごとに個別具体的な検討が必要です。

分与される財産

特別縁故者として認められた者に具体的にどれくらいの遺産が分与されるかについては、法律上は「相続財産の全部又は一部を与えることができる」と規定しているのみで、具体的な算定基準は示されていません。裁判例では被相続人との関係性や、年齢、職業、遺産の種類、数額等の一切の事情を考慮して決定すべきとされており、結局のところは個別具体的な事例ごとに判断されます。

分与の手続

特別縁故者の財産分与の申立ては、相続財産清算人の清算手続の中で、所定の期間内に行う必要があります。
ここで一旦相続財産清算人の清算手続の流れをまとめます。なお②の相続財産清算人の申立てについては、特別縁故者も利害関係人にあたるため申立てをすることができます。

  • 相続開始(被相続人の死亡)
  • 利害関係人より、相続財産清算人の選任申立て
  • 家庭裁判所による清算人選任及び相続人捜索の公告(1回目)
  • 相続財産清算人よる相続人捜索の公告(2回目)
  • 特別縁故者による財産分与の申立て

⑤の申立ては、被相続人の住所地を管轄する家庭裁判所に対して、③の公告の期間満了後3か月以内に行う必要があります。

なお、特別縁故者が複数存在する場合には、審理は併合して行われ、各自の被相続人との関係性や縁故の濃淡によって、それぞれの分与額が決定されます。


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