養子についてわかりやすく解説|種類・要件・方法や注意点について

「養子」について|方法・注意点を解説
目次

養子の種類は?

日本の法律上、養子は普通養子と特別養子の2種類に分類できます。この2つは、養子が、縁組をした養親の第一順位の推定相続人となる点では共通しているものの、縁組の要件や手続方法が大きく異なります。以下、それぞれの相違点について詳述します。

なお、政府統計によれば、2021年度に届出のあった養子縁組件数(普通養子と特別養子の双方を含む。)は60,229件で、司法統計によれば、うち特別養子縁組の件数は683件となっており、普通養子が約99%を占めています。

普通養子

普通養子縁組とは、実親(血の繋がった、いわゆる「生みの親」)との親子関係を存続させたまま、養親(養子縁組により親となる者)と養子との間に親子関係を発生させる養子縁組です。

今日の日本では、普通養子縁組は一部里親制度に関連して利用されることもあるようですが、相続税対策や遺留分・遺産承継に関する相続対策目的、氏の存続を目的とした縁組が行われることが多く、本来の養子縁組制度の目的とは離れた形で利用されているように思います。

特別養子

特別養子縁組は、養親との間に新たな親子関係が発生し、実親との親子関係は法律上終了するという点で、普通養子縁組とは大きく異なります。

戸籍上も、普通養子縁組では、養子の父母欄には実親の氏名に加えて養親の氏名が併記される形になりますが、特別養子縁組では、養子の父母欄には実親の氏名は記載されず、養親が実親として記載される点が最大の特徴です。これは養子が不用意に事実を知ることを防止するためでありながら、他方で、養子が分別のつく年齢になり自身の出自を知ることを希望する場合には、過去の戸籍をたどり実親に辿りつく途も用意されています。

菊田医師事件

特別養子制度は「菊田医師事件」が契機となって創設されました。事件の概要は以下のとおりです。

産婦人科医である菊田医師は、いわゆる人工中絶を希望する妊婦を説得し出産を勧める一方で、不妊などの理由で子に恵まれず、その生まれる子の養育を希望する者に無報酬であっせんし、当該養育希望者を母とする虚偽の出生証明書を作成するという活動を展開していました。

これにより菊田医師は刑事告発され、罰金の略式命令、医業停止処分、学会除名、優生保護法指定医剥奪などの処分を受けました。このように、菊田医師が行ったことは法に反するばかりでなく、同業者からは批判の的となり業界を追放される結果とはなりましたが、事実100名以上の嬰児の命を救っており、またこの事件を機に普通養子縁組とは異なる制度の必要性が社会的に認知され、特別養子縁組制度の制定のきっかけとなりました。

普通養子について

普通養子縁組の要件・方法

普通養子縁組の形式的要件としては、

  • 養親が20歳以上であること
  • 養子が養親の年長者又は尊属でないこと

の2点が挙げられます。

年長者とは、年上の者という意味です。理論上は養子より1日でも生年月日が早ければ、養親になることができます。尊属とは、家系図上で自分より上の代になる親族のことです。昭和の時代の戸籍を見ていると、兄弟姉妹間での養子縁組の例がよく見られ、現在でも祖父母と孫など親族間での養子縁組というのは珍しいものではありません。

かなり想定しにくい事例ではありますが、例えば自身が20歳、母が35歳、母の弟(叔父)が19歳の場合、「年下の叔父」という不思議な関係が起こり得ます。この場合、叔父は自身より年下ではありますが、家系図だと自身の上の代であり尊属に当たるため、養子とすることができません。普通養子縁組は、養親・養子の双方と成年の証人2人以上が署名した養子縁組届を役所に提出して行います。

例外として

未成年者を養子とする場合後見人が被後見人を養子とする場合などは、別途家庭裁判所の許可を得る必要があります。

普通養子の相続権

養子は、縁組の届出が受理された日から養親の嫡出子となり、実子・配偶者と並んで第一順位の法定相続人となります。

また、養子縁組によって養親との親子関係が発生しても実親との親子関係には影響がないため、たとえ実親と事実上絶縁していたとしても、実親が亡くなった際には通常どおり法定相続人となります。逆に養子が亡くなり、その養子に子がいなかった場合には、直系尊属として養親も実親も同時に法定相続人となります。

普通養子縁組の離縁

離縁の方法としては、①協議離縁調停離縁審判離縁裁判離縁和解離縁認諾離縁死後離縁があります。
離縁の手続は離婚と同じようにイメージすることができます。

割合としては①の協議離縁が一番多いと思われ、離婚届と同様に、養親・養子の双方が記入した離縁届を役所に提出して行います。当事者の一方が離縁に応じない場合には協議離縁を行うことができず、裁判所の手続を利用して②~⑥のいずれかによって離縁します(離縁が認められない場合もあります。)。詳細な手続については割愛します。

養親・養子の一方が死亡している場合は、上記①~⑥の手続によって離縁することができません。⑦の家庭裁判所の死後離縁許可を得る必要がありますが、これは養子が養親から多額の相続のみを受け、養親の親族に対する扶養義務を免れるような恣意的離縁を防止するためです。

しかしながらこのような状況は例外的であると考えられ、死後離縁の手続としては、書面照会又は簡単な審問等を行い、現実的には申立人の真意である限りはほとんど許可されているものと思われます。

特別養子について

特別養子縁組の要件・方法

前提として、特別養子縁組のハードルは非常に高いものといえます。司法統計には表れませんが、特別養子縁組の手続案内や申立書類の交付を求める相談者はいるものの、その大半が手続のハードルの高さや許可の見込みが低いことを予見して申立てに至らないケースが多く散見されます。

特別養子縁組の形式的な要件

  • 養親は配偶者がいること②夫婦共同で養親となること
  • 養親は一方が25歳以上、もう一方が20歳以上であること
  • 養子は原則として15歳未満であること

特別養子適格の確認の審判

特別養子縁組の審判手続は2段階構成となっており、その1段階目の手続が「特別養子適格の確認の審判」となっています。

この手続は、養子となる者の要保護事由、具体的には実父母における虐待や遺棄など、実父母において監護することが困難である事情を調査し、普通養子縁組ではなく、その子にとって特別養子縁組を成立させることが必要な事情があるかを中心に審理が行われます。

特別養子縁組の成立の審判

上記に引き続いて、2段階目の「特別養子縁組の成立の審判」においては、養親がその養子にふさわしいか、すなわち養親子間の適合性が審理対象となります。

よって、1段階目の審判は養子について(特別養子縁組の必要性があるか)の審判、2段階目の審判は養親について(養親の適合性があるか)の審判であるといえます。

この「特別養子縁組の成立の審判」においては、養親となる者による6か月以上の監護状況を考慮することが法律に定められています。後述しますが、特別養子縁組は実父母との親族関係が終了し、さらに養父母との離縁も原則として認められないため、養親・養子間の現実的な適合性確認のため、この試験養育が要求されています。

特別養子の相続権

特別養子は、特別養子縁組が成立すると、実子・配偶者と並んで第一順位の法定相続人となります。この点は普通養子縁組と異なりません。

特別養子縁組のみにみられる効果としては、実父母と養子間の親族関係が終了するという点があります。この効果によって、実父母・養子間で相互に相続関係がなくなるため、実父母が亡くなった場合でも養子は相続人とならず、他方、養子が亡くなった場合にも、直系尊属としての相続人に実父母は該当せず、養父母が相続人となります。

特別養子縁組の離縁

普通養子縁組においては、養親・養子の双方の合意があれば離縁届を役所に提出して行う協議離縁が認められていましたが、特別養子縁組においてはたとえ双方の合意があったとしても、原則として離縁が認められていません。

例外的に、①養親による虐待等養子の利益を著しく害する事由②実父母が相当の監護をできること③養子の利益のために特に必要があること、の3つの要件が満たされる場合に限って、家庭裁判所の審判のより離縁することができます。これ以外の方法による協議離縁、裁判離縁等は一切認められていません。

なお、特別養子縁組の審判の申立権を有するのは、養子、養子の実父母、検察官に限られます。特別養子縁組の離縁は、子の利益のために例外的に認められるものであるため、養親には申立権が認められていません。


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