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「養子にしたから相続は大丈夫」と思っていませんか?
「子どもがいないため、将来のことを考えて養子縁組をした」
「再婚相手の子を養子に迎え、家族として暮らしている」
「相続対策として養子縁組を検討している」
こうしたご相談は、近年とても増えています。家族の形が多様化する中で、養子縁組は決して珍しい制度ではなくなりました。一方で、養子縁組について次のように考えている方も少なくありません。
「養子にすれば、相続の心配はなくなる」
「実子と同じ扱いになるのだから、遺言までは必要ない」
「家族なのだから、話し合えば何とかなるはず」
しかし、実務の現場では、養子縁組をしている家庭ほど相続で悩みが生じるケースも少なくありません。
それは、養子縁組が「相続のゴール」ではなく、相続関係が本格的に動き出すスタート地点になることがあるからです。
この記事では、
養子・相続・遺言の関係を、実際に起こりやすい場面や判断の分かれ道を踏まえて解説します。
養子縁組をすると、法律上、養子は「子ども」として扱われます。つまり、養子は法定相続人になります。
法定相続人とは、簡単に言うと「法律で、この人たちが相続する権利を持っています」と決められている人のことです。配偶者や実子が代表的ですが、養子縁組をすると、養子も実子と同じ立場で相続権を持つことになります。この点だけを見ると、「それなら安心だ」と感じる方も多いでしょう。しかし、相続では「相続人になること」よりも、「誰が、どれだけ、どの財産を引き継ぐのか」が重要になります。
養子縁組によって相続人の人数が増えると、それだけ話し合いが必要な人も増え、感情や価値観の違いが表面化しやすくなります。
養子縁組をしても、相続が必ず円満に進むとは限りません。その理由は、制度と現実の間にギャップがあるからです。たとえば、法律上は実子も養子も同じ相続分であっても、
こうした事情があると、「法律上は平等」という説明だけでは納得できない場面が生じます。
相続は、制度だけで割り切れるものではなく、感情が強く影響する出来事です。
だからこそ、養子縁組がある相続では、「話し合えば何とかなる」という考えが、かえってトラブルの原因になることもあります。
ここで重要になるのが、遺言の存在です。遺言は、単に財産の分け方を指定する書類ではありません。
養子がいる相続では、遺言は次のような役割を果たします。
遺言がない場合、相続は原則として法定相続分に基づいて進められます。法定相続分とは、遺言がないときに、法律が目安として示している分け方です。これは「必ずこの通りにしなければならない」という意味ではなく、
話し合いがまとまらない場合の基準として使われます。
養子縁組をした理由や、家族関係の実情は、法定相続分には反映されません。
だからこそ、養子がいる相続ほど、本人の意思を残す遺言が大きな意味を持ちます。
相続や遺言の話で、必ず出てくる言葉に「遺留分(いりゅうぶん)」があります。
遺留分とは、とてもシンプルに言うと、「たとえ遺言があっても、最低限はもらえると法律で守られている取り分」のことです。遺言があれば、財産を自由に分けられると思われがちですが、実は、完全に自由というわけではありません。
遺留分があるのは、配偶者、子ども(実子・養子を含む)、そして親などの直系尊属です。兄弟姉妹には遺留分はありません。つまり、養子も「子ども」として遺留分を持つということになります。
たとえば、「養子にすべての財産を渡す」という遺言を書いた場合、実子がいれば、その実子には「最低限はもらえるはずだ」という権利が残ります。反対に、養子の遺留分を無視した遺言を書いた場合も、後から請求がなされ、相続が揉める原因になります。
ただし、ここで誤解してほしくないのは、遺留分があるから遺言が意味を持たないわけではないという点です。遺言があることで、本人の意思や考え方が明確になり、相続人が感情的に納得しやすくなることも多くあります。
養子がいる相続で遺言を書く場合、重要なのは「数字」だけではありません。
誰にどれだけ渡すか、という結果よりも、なぜその分け方にしたのかを伝えることが重要です。
遺言書には「付言事項」という自由に書ける欄があります。
ここに、
を書いておくことで、遺言を受け取る側の受け止め方は大きく変わります。
再婚後、配偶者の子を養子に迎えたものの、遺言を残していなかったケースでは、亡くなった後に実子と養子の間で相続分を巡る話し合いが難航しました。制度上は同じ相続人であっても、それぞれの立場や感情は同じではありません。
また、養子に多く残したい思いがあり遺言を書いていたものの、理由の説明が足りなかったため、他の相続人が強い不公平感を抱いてしまったケースもあります。遺言は「あるか・ないか」だけでなく、どう書くかが結果を左右します。
養子縁組がある相続では、次の順番で考えることが大切です。
まず、養子縁組によって相続人がどう変わるかを理解する。次に、自分が誰に何を残したいのか、その理由を整理する。法定相続とズレがある場合、遺言で調整する。この順番を踏むことで、「遺言を書くべきかどうか」が自然に見えてきます。
養子縁組は、相続対策として有効な場面もあります。しかし、それだけで相続が安心になるわけではありません。養子がいるからこそ、相続の形はより丁寧に設計する必要があります。
遺言は、財産を分けるための書類であると同時に、家族への説明書でもあります。
もし、「自分の場合、養子縁組と相続はどう考えるべきか」「遺言が必要なのか迷っている」そう感じたときは、結論を急ぐ前に、まず状況を整理することが大切です。養子・相続・遺言は、制度よりも順番と説明が結果を左右します。
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