後見人とは?種類や特徴・役割等を解説

後見人とは?|酒類や特徴・役割等を解説
目次

後見人とは何か?

後見人は、法的な観点から他人の権利や利益を保護する制度です。この制度は、未成年者、高齢者、障がいを持つ方々などが自己の権利を適切に行使できない場合に適用され、大きく「未成年後見人」と「成年後見人」に分かれます。さらに成年後見人には「任意後見人」と「法定後見人」の2種類に分かれ、それぞれの役割や権限が異なってきます。

後見人制度の根底にある理念

後見人制度の根底にあるのは、権利保護と尊厳の尊重です。未成年者や高齢者、障がい者などは、自己の権利を保持しつつも、その権利を適切に行使する能力に制限がある場合があります。後見人は法律的な代理人として利益を守り、必要なケアや支援を提供します。これは社会的な包摂と公平な機会づくりの一環として重要な役割を果たしています。

後見人制度の具体的なケース

  1. 未成年者の後見人:親権者の死亡などの理由により、未成年者に対して親権を行う者がいない場合に、家庭裁判所によって選任される法定代理人になります。親の代わりとして、死亡などの理由により親権者がいない未成年のために親権者と同様の役割を行います。
  2. 法定後見人:すでに認知症などの精神障害によって判断能力が衰えてしまっている人を詐欺や不当な契約等から保護することを目的として家庭裁判所より成年後見人を選任されます。成年後見人は、本人の財産を管理したり、適切な契約の締結をし、本人の生活を支えます。
  3. 任意後見人:現在は判断能力が低下しているわけではないものの、将来的に病気などになって判断能力が低下した場合に備え、任意に後見人を選任しておく制度になります。あらかじめ選任しておく後見人は、家族や親族等、ご自身の信頼のおける方に選任しておくことが可能です。

未成年後見人

「未成年後見人」とは、親権者の死亡などの理由により未成年者に対して親権を行う者がいない場合に、家庭裁判所によって選任される法定代理人のことを言います。法定代理人とは、本人の意思によらず法律上選任される代理人です。

未成年後見人は誰がなれる?

未成年後見人になるために弁護士、司法書士、社会福祉士などの資格は必要ありません。ただし、成年後見人と同様に、民法847条により欠格事由が定められています。

第847条【後見人の欠格事由】
次に掲げる者は、後見人となることができない。
一 未成年者
二 家庭裁判所で免ぜられた法定代理人、保佐人又は補助人
三 破産者
四 被後見人に対して訴訟をし、又はした者並びにその配偶者及び直系血族
五 行方の知れない者

上記、欠格事由に該当する者は未成年後見人となることができません。また、欠格事由に該当しない限り、誰でもなれるというわけではなく、家庭裁判所による選任の場合、未成年後見人の年齢や財産の状況などの一切の状況を考慮して選任がされることになっています。よって、必ずしも希望の未成年後見人が選任されるわけではありません。

未成年後見人が必要となるケース

まず両親が死亡した場合に必要となります。また離婚すると一方の親が親権者となりますが、その親が死亡した場合も該当します。親が未成年者を虐待するなどして親権を喪失した場合などは、未成年者の親権者がいなくなることになります(親権を行使できなくなります)ので、未成年後見人の選任が必要となってきます。

もっとも、実際には、親権者がいなくても親戚などによって、事実上監護されていることも少なくありません。実際に未成年後見人が必要となるのは、子どもに財産があって、その管理者を置く必要がある場合、子どもを他人の養子にするために代諾者が必要となる場合、遺産分割をしなければならない場合などに限られています。

未成年後見人を選任する方法

遺言書で指定、又は家庭裁判所で選任

未成年後見人の選任方法は二つあります。一つは親権者の遺言によって指定する方法です。もう一つの方法は、遺言により未成年後見人の指定がない場合に、未成年者本人またはその親族その他利害関係人が家庭裁判所に請求することにより、未成年後見人を選任してもらう方法です。

家庭裁判所において、未成年後見人が選任されるときは、未成年者の年齢、心身の状態並びに生活及び財産状況、未成年後見人となる者の職業及び経歴並びに未成年者との利害関係の有無、未成年者の意見、その他の一切の事情が考慮されます。

また、未成年後見人を複数選任することや、法人を未成年後見人として選任することも可能です。

未成年後見人が複数選任されているときは、原則として複数の未成年後見人がそれぞれ単独で権限を行使することはできず、共同してその権限を行使しなければなりません。もっとも、第三者から未成年者に対する請求や意思表示は、複数の未成年後見人のうち、誰か一人に対して行えば良いことになっています。未成年後見人が選任されると、未成年者の戸籍に未成年後見人が選任されたことが記載されます。

法定後見人

法定後見制度とは、認知症や精神上の障がい等により意思能力が不十分な人に対して適用される保護制度のことです。家庭裁判所への申立てによって選ばれた後見人が、本人の代わりに財産や権利を保護する役目を担います。

法定後見制度の種類

法定後見人は以下の3つの種類に分類されます。

・後見:意思決定がほとんどできない人が対象
・保佐:意思能力が著しく不十分な人が対象
・補助:意思能力が不十分な人が対象

「後見人」の権限

本人は、基本的に身の回りのことが何も行えない状態であるため、後見人には財産に関すること等、すべてに対して代理権が認められています。例えば、後見人は本人のために介護サービス契約を締結できるなど、本人の利益につながる契約を本人に代わって締結することが可能です。また本人が行った法律行為に対して同意する権限(同意権)と、本人が行った法律行為を取り消す権限(取消権)も認められています。

「保佐人」の権限

保佐は、簡単なことであれば自分で判断できる能力が残っているものの、法律で定められた一定の行為については第三者の援助を必要とする状態であるため、保佐人には「同意権」と「取消権」、「追認権」が認められています。また、審判や本人の同意があれば「代理権」も認められています。

保佐人の同意については、具体的には借金、訴訟行為、相続の承認や放棄、新築・改築・増築などの行為は保佐人の同意が必要となります。同意が必要な行為については上記に挙げた重要な法律行為以外にも必要が認められれば、家庭裁判所の審判によって追加指定が可能です。

「補助人」の権限

補助は、後見や保佐と異なり大体のことは自分で判断できるものの、複雑な手続等については援助を必要とする状態であるため、被補助人には「同意見」と「取消権」、「追認権」が認められています。また、同意・取り消しの対象となる行為は裁判所が決定します。なお、補助人に与えられる権限は保佐と同様であるものの、その範囲に制限があります。

そして、成年後見人や保佐人の選任にあたって本人の同意が必要ないのに対し、補助人の選任においては本人の同意が必要になります。

法定後見人のできる事・できない事

法定後見人として選任されると、本人の代理人として財産の保護・管理を行うほか必要とされる契約の締結等を行います。

財産管理

家庭裁判所の審判によって法定後見人に選任されると、法定後見人は本人の「財産目録」および「年間収支予定表」を作成し、定められた期限内に提出する必要があります。後見人は、毎月・年間の収支を把握するほか、定められた時期に定期報告をしなければなりません。そして、書類の作成・報告だけにとどまらず、不動産の管理、入院費や介護施設への入所費用の支払い、税金の処理なども後見人の仕事に含まれます。

身上監護

「身上監護」とは、意思能力を喪失した本人に代わって、住居確保や生活環境の整備、要介護・要支援の認定申請、介護・福祉施設への入退去に係る手続き、医療・入院に係る手続き、費用の支払い等を行うことを指します。また必要があると判断された場合には、医療サービスを受けるための手続きを本人に代わって進めたり、賃貸契約の締結などを行うこともあります。そしてそれらの契約を締結して終わりというわけではなく、契約通りにサービスが履行されているかどうかも確認しなければなりません。

身上監護に関すること病院への入院手続
老人介護施設への入居手続
行政窓口への手続
財産管理に関すること不動産(土地、建物)の管理や処分
動産(自動車、宝石など)の管理や処分
建物賃貸借契約の締結や解除
預金口座の管理

成年後見人は本人に代わって上記の法律行為を行うことができますが、本人に代わって全ての法律行為を行うことができるわけではありません。法律行為ではない単なる事実行為や、結婚や離婚などの身分法上の行為についてはできないとされています。

【成年後見人ではできないこと】
・日用品の購入の同意や取消し
・食事の提供、病院への送り迎えなどの事実行為
・保証人になること
・婚姻届や離婚届を提出すること

法定後見人は誰がなれる?

成年後見人になるために必要な資格などは特にありません。しかし、成年後見人は本人の大切な財産を管理する必要があるため、民法により欠格事由が定められています。民法 847 条(後見人の欠格事由)によれば、次に該当する人は後見人と認められません。

第847条【後見人の欠格事由】
次に掲げる者は、後見人となることができない。
一 未成年者
二 家庭裁判所で免ぜられた法定代理人、保佐人又は補助人
三 破産者
四 被後見人に対して訴訟をし、又はした者並びにその配偶者及び直系血族
五 行方の知れない者

任意後見人

任意後見制度は、認知症や障がいなどで、将来自身の判断能力が不十分となった後に、本人に代わってしてもらいたいことを備えるための制度です。本人の判断能力があるうちに、自己の生活、財産管理や介護サービス締結といった療養看護に関する事務の全部または一部を信頼できる方に依頼し、引き受けてもらうための契約を結びます。

この契約を任意後見契約といい、委任する内容は公正証書によって定められるものです。依頼する本人を委任者、引き受ける方を任意後見受任者(後に、任意後見人)といいます。

身寄りがいない場合、任意後見制度で介護施設の入所に備える

施設入所契約を締結する際、身元保証人が必要になります。
施設によっては、身寄りがなく身元保証人が立てられない場合は、身元保証会社との契約または任意後見人を定めることを前提としているところもあります。

任意後見手続きの流れ

STEP
任意後見受任者を決める

任意後見人になるためには資格は必要ありません。家族や親戚、友人、弁護士や司法書士等のほか、法人と契約を結ぶこともできます。また、任意後見人は複数選ぶことも可能です。ただし、以下に該当する人は任意後見人になることができません。

STEP
任意後見受任者にしてもらう事を決める

契約内容を考える際には、たとえば、身体が動かなくなったら○△施設に入所希望、かかりつけ医は○×病院等、将来の生活に関する具体的な希望や金額等を決めます。また、病歴も確認し、任意後見受任者に伝えるのがおすすめです。

任意後見人にどのような事務を依頼するかは、契約当事者同士の自由な契約によります。任意後見契約で委任することができる内容は、財産管理に関する法律行為と、医療や介護サービス締結といった療養看護に関する事務や法律行為、それに付帯する登記の申請等です。

STEP
公正証書にて締結する

任意後見契約の内容が決まったら、本人と任意後見受任者の双方が、最寄りの公証役場に赴き公正証書を作成します。事情により本人が直接公証役場に出向けないときは、公証人に出張してもらうことも可能です。公正証書とは、公証役場の公証人が作成する証書で、公正証書によらない任意後見契約は無効となりますので注意しましょう。

STEP
判断能力が低下したら「任意後見監督人選任の申し立て」をする

認知症の症状がみられるなど、本人の判断能力が低下した場合、任意後見監督人の選任の申立を行います。任意後見契約は、任意後見監督人が選任されたときから効力が発生します。申し立て先は、本人の住所地の家庭裁判所です。

任意後見監督人は、任意後見人が契約内容どおりに適正に仕事をしているかどうかを監督する役割の人です。このような事務について、任意後見監督人は家庭裁判所に報告を行い、監督を受けています。

申し立てができるのは、本人、配偶者、四親等内の親族、任意後見人です。原則として、本人以外が申し立てを行う場合には、本人の同意が必要とされています。

任意後見監督人の報酬はいくら位?

任意後見監督人に支払う報酬額は、家庭裁判所が決定します。また、任意後見監督事務を行うに際し必要となった経費は、本人の財産から支払うことが可能です。報酬額の目安は「管理財産額が5,000万円以下の場合には月額1万円~2万円,管理財産額が5,000万円を超える場合には月額2万5000円~3万円」(注)とされています。

任意後見には即効型・将来型・移行型の3種類ある

任意後見制度は、本人の健康状態や判断能力の程度によって3種類の契約に分けられます。それぞれの内容を解説していきましょう。

即効型とは?

法定後見における補助相当の場合(軽度の認知症・知的障害・精神障害など)であっても、本人がまだ意思能力を有しており、任意後見契約を締結することが可能な場合に検討します。このような場合、任意後見契約締結と同時に、家庭裁判所に任意後見監督人の選任の申し立てを行い、任意後見をすぐに開始するものです。

ただし、本人が制度や内容について十分に理解できておらず、不利益を被る契約内容になっていたり、任意後見開始後に本人との間でトラブルになったりすることも考えられるため注意が必要です。

将来型とは?

本人に判断能力があるときに任意後見契約を締結します。その後、本人の判断能力が不十分となったときに任意後見監督人の選任の申し立てを行い、任意後見を開始するものです。「将来型」の場合、任意後見受任者が、本人の判断能力の低下に気がつかなかったり、本人が任意後見契約を締結したこと自体を忘れてしまったりすることもある可能性があります。
そのため別途、「見守り契約」を結び、任意後見の発効まで継続的に支援する仕組みを作ることが一般的です。

移行型とは?

移行型は、任意後見契約で最も多く使われている類型です。任意後見契約締結と同時に見守り契約(本人の健康状態等を把握するために定期的に訪問するなどして見守るという契約)や任意代理契約(財産管理・身上監護に関する委任契約)や死後事務委任契約(死亡時の葬儀等事務に関する委任契約)などを締結します。本人の判断能力がある当初は見守り契約や委任契約による支援を行い、本人の判断能力が低下した後は任意後見契約による支援を行うため、支援の空白期間がないメリットがあります。

任意後見契約の終了

任意後見契約は、本人または任意後見人が死亡・破産すると契約は終了します。また、任意後見人が認知症などで被後見人等になったときも同様です。また、任意後見人に不正行為、著しい不行跡、その他任務に適しない事由があるときは、家庭裁判所は任意後見人を解任することができます。解任請求ができるのは、任意後見監督人、本人、その親族または検察官です。

契約内容の変更や契約をやめたくなったときは

任意後見契約の内容を変更することは可能です。どこを変更するかにより手続は異なりますが、どのような場合でも公正証書で契約します。また、任意後見契約の解除は、家庭裁判所が任意後見監督人を選任する前か後かで、手続きが異なるので注意が必要です。

【選任前】
本人または任意後見受任者は、いつでも契約を解除することができます。ただし、公証人の認証が必要です。
【選任後】
正当な事由がある場合に限り、家庭裁判所の許可を得て、契約を解除することができます。申立てができるのは、本人または任意後見人です。

任意後見は将来に備えた対策

元気で判断能力があるうちに、判断能力が低下したときに備えておくのが任意後見制度です。将来、安心して老後を迎えるためのものです。任意後見人には、本人の意思を尊重し、かつ、その心身の状態及び生活の状況に配慮しなければならないという義務があります。

任意後見人を決める際は、信頼できる人であるのはもちろんのこと、自分にとっての最善を常に考えてくれる人を選ぶようにしましょう。また、任意後見契約を締結するにあたっては、残りの人生をどう生きていきたいかを任意後見人となる人にしっかり伝えることが大切です。

法定後見と任意後見のメリット・デメリット

法定後見

メリット

・成年後見人に選任されたらすぐに財産管理ができる
・不利益な契約を取り消せる
・身近な人(家族・親族等)による財産の使い込みを防げる
・介護サービスや施設入所などの契約ができる

デメリット

・家庭裁判所が選任するため、自由には決められない
・本人が死亡するまで解任できない
・財産の移動ができない
・積極的な資産運用ができない

任意後見

メリット

・本人の意思で自由に契約内容を決められる
・本人が任意後見人を選べる
・契約内容が登記されるため、公的に証明できる

デメリット

・家庭裁判所が後見監督人を選任するまで実働できない
・公正証書で作成する必要があり、締結に手間がかかる
・取消権がない


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